初回1時間 来所・zoom相談無料

0120-630-807

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません 会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。

人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

裁判員休暇|従業員が選任された場合の会社の対応について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

2009年5月に始まった「裁判員制度」では、労働者が裁判員に選ばれた場合、会社(使用者)はその社員に「裁判員休暇」という特別な休暇を与える必要があります。

この記事では、裁判員休暇の基本的な内容や、休暇中の給与を支払う必要があるかどうか、また裁判員に選ばれなかった場合の対応などについて、わかりやすく解説します。

裁判員休暇の概要

裁判員として刑事裁判に参加することは、労働基準法第7条に定められた「公の職務の執行」に該当します。そのため、労働者が裁判員や裁判員候補者に選ばれ、必要な時間の休暇を申し出た場合、会社(使用者)はこれを拒否することはできません。これがいわゆる「裁判員休暇」です。

労働基準法
(公民権行使の保障)第7条

使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。

「裁判員休暇」とは、裁判員としての職務を果たすために必要な時間を確保するための休暇であり、公民権の行使に伴う休暇の一種です。なお、この休暇を有給とするか無給とするかは、法律上の義務ではなく、企業ごとの判断に委ねられています。ただし、国は幅広い国民の参加を促すため、有給での対応を推奨しています。

裁判員制度は、2009年5月21日に始まった日本の司法制度で、重大な刑事事件について、国民から選ばれた裁判員が裁判官とともに審理に参加する仕組みです。裁判員に選ばれた場合、原則として辞退はできず、裁判は平日に行われるため、勤務日と重なる場合には裁判員としての職務が優先されます。

労働基準法7条が保障する、公民権行使にかかる休暇の詳細については、下記の記事をご覧ください。

従業員の公民権行使のための休暇

裁判員等の職務の執行に必要な日数

裁判員制度において必要となる日数は、「裁判員候補者」のまま終わるか、「正式に裁判員に選ばれるか」によって異なります。

まず、裁判員候補者として裁判所に呼び出された場合は、選任手続きの日に裁判所へ出向き、裁判官との面接を受けます。この面接の結果、裁判員に選ばれなかった場合は、その後の拘束はありません。

一方で、正式に裁判員に選ばれた場合は、裁判の審理に参加することになります。審理は通常、5日前後で終了するケースが多いとされています(裁判所発行「よくわかる!裁判員制度Q&A(第13版)」より)。

なお、裁判員としての参加に必要な日数について、法律上の明確な定めはありません。そのため、企業の就業規則では、以下のような日数を目安として裁判員休暇の取り扱いを定めておくことが望ましいとされています。

  • 裁判員候補者:1日
  • 裁判員:5日前後

裁判員休暇中の給与

裁判員休暇は無給にできるのか?

法律上、裁判員休暇中の給与支払いに関する定めはないので、有給とするか無給とするかは、使用者の判断に委ねられます。したがって、無給としても違法ではありません。

なお、裁判員として選任された労働者には、交通費とは別に裁判員としての日当が支払われるため、その日の収入がゼロになることはありません。

裁判員休暇を有給とする場合、報酬の二重取りに当たるのではないか、どの程度支払うべきかといった疑問が出てくるかと思いますので、以下で解説しています。 

有給とした場合は報酬の二重取りに当たるのか?

「裁判員としての日当」と「会社からの給与」は、両方を受け取っても“報酬の二重取り”にはなりません。これは、裁判員としての日当には以下のような目的があるためです。

裁判員としての「日当は、裁判員としての職務等を遂行することによる損失(例えば、保育料、その他裁判所に行くために要した諸雑費等)を一定の限度内で弁償・補償するもの」である。

法務省「従業員の方が裁判員等に選ばれた場合のQ&A

つまり、裁判員の日当が“報酬”ではなく、裁判に参加するための交通費や食費などを補うための「実費的な支給」とされており、日当と給与は性質が異なるため、両方を受け取っても問題はありません。

日当と給与の差額支給は可能か?

給与と日当の差額を支給する「有給の特別休暇」を付与することは可能です。この場合、以下のような規定を就業規則に定めておく必要があります。

(裁判員のための休暇)
労働者が裁判員休暇を取得した場合、当該休暇日の1日分の給与額(例:1万8000円)と、裁判所から受領した日当額(例:1万円)との差額(例:8000円)を支給する。

ただし、初めから差額を支払うのではなく、「日当額を給与から差し引く」という方法にしてしまうと、労働基準法24条の「賃金全額払いの原則」に抵触するため違法となる可能性があります。

また、裁判としての日当を会社に納付させる場合、それによって労働者が不利益を被らないよう注意が必要です。
例えば、日当が10,000円、1日分の給与が8,000円だった場合、日当を納めると労働者は2,000円の不利益を被るため、裁判員法100条が禁止する不利益取扱いに該当する可能性があります。

裁判員休暇の取得後に不選任となった場合の対応

1件の裁判につき、50~70人の裁判員候補者が選任手続に参加することになりますが、最終的に選任されるのは、裁判員6人と補充裁判員若干名だけです。したがって、裁判員休暇を取得したとしても、大多数が不選任となります。

裁判員選任手続は2時間程度で終了するため、例えば、裁判員選任手続が午前中に行われ、裁判員に選任されなかった場合に、午後から休暇を取りやめて出社させるか、そのまま休暇とするかは、事前に就業規則で定めておく必要があるでしょう。

具体的には、裁判員休暇について、「必要な日数又は時間の休暇を与える」と定める方法や「裁判員候補者に対して必要な時間の休暇を与える」と定める方法があります。

裁判員選任についての会社への報告義務

裁判員法101条1項は、裁判員等に選ばれた者の氏名、住所その他個人を特定するに足りる情報を公にすることを禁止しています。とはいえ、「公にする」とは、このような情報を不特定または多数人の知り得る状態に置くことをいうので、裁判員候補者となった労働者が、休暇を申請するために使用者に報告することは問題ありません。

よって、裁判員等に選ばれた労働者が一定期間労働に従事できないため、労働者の勤務体制の変更等を行わなければならないといった合理的な必要性がある場合に、当該必要性の範囲内で、次の①~③の報告を義務づけること自体は、裁判員法に違反しないと解されるでしょう。

  • ①裁判員候補者名簿記載通知の送付を受けたこと
  • ②候補者として呼び出しを受けたこと
  • ③裁判員・補充裁判員に選ばれたこと

裁判員法
(裁判員等を特定するに足りる情報の取扱い) 第101条

1 何人も、裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない。これらであった者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報についても、本人がこれを公にすることに同意している場合を除き、同様とする。

裁判員休暇における不利益取扱いの禁止

裁判員法100条は、労働者が裁判員休暇を取得したこと等を理由に、解雇その他不利益な取扱いをすることを禁止しています。

裁判員法
(不利益取扱いの禁止)第100条

労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

不利益な取扱いとは、例えば、全労働日の80%以上に出勤した労働者に与えなければならない「有給休暇」の付与義務(労働基準法39条)の判断に際して、裁判員休暇日を全労働日に含めて出勤率を算定するようなことをいいます。なぜなら、本来、出勤率の算定にあたっては、全労働日から裁判員休暇日を除外するべきであるからです。

なお、労使間の合意で「出勤したもの」と認める等、労働者に有利に取り扱うことは何ら問題ありません。

不利益取扱いの詳細は、以下のページで解説しています。

不利益取扱いの禁止
ちょこっと人事労務

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

企業側人事労務に関するご相談 来所・zoom相談無料(初回1時間)

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません。

0120-630-807

受付時間:平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00

0120-630-807

平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます