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労働契約とは|雇用契約との違いや基本原則などわかりやすく解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働契約とは、使用者と労働者の間で締結する、労働条件などを定めた契約です。労働者を雇う際は、必ず用意しなければなりません。

ただし、労働契約には法律上の規定や制約が適用されるため、企業が一方的に決定することはできません。労働者に内容をきちんと説明し、同意を得ることが重要です。

本記事では、労働契約のルールや締結・変更する際の注意点などを詳しく解説していきます。

労働契約とは

労働契約とは、労働者が使用者の指揮命令下で労務を提供し、使用者がそれに対して賃金を支払う契約です。労働契約法によって規定されており、労使双方の合意によって契約が成立します。
企業と労働者が結ぶ契約の多くは、労働契約にあたると考えて良いでしょう。

労働契約を締結することで、労働者は決められた時間に誠実に業務を行う義務を負います。一方、企業も、労働者の安全や健康を確保し、働きやすい職場づくりに取り組む義務を負うことになります。

労働契約法とは

労働契約法とは、2008年3月1日に施行された、労働契約に関する基本的なルールを定めた法律です。

労働契約法の条文の多くは、過去の判例で確立された考え方を明文化したものです。労使間のトラブルを未然に防ぐために、労働者と使用者がそれぞれ気をつけるべき行動の規範として制定されました。

労働者と使用者が対等な立場で、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにするために、主に次のようなルールが定められています。

  • 労働契約が合意により成立し又は変更されるという合意の原則(労契法1条、同法3条1項)
  • 労働者の健康や安全への使用者の配慮(同法5条)
  • 労働契約の一方的な不利益変更の禁止(同法9条)
  • 労働契約の不利益変更には「合理的な理由」と「周知」が必要(同法10条)
  • 解雇権の濫用の禁止(同法16条)
  • 労働契約が「通算5年」を超えて更新された有期雇用契約の無期雇用契約への転換(同法18条)
  • 有期雇用契約の労働者の契約更新を合理的な理由なく拒否することの禁止(同法19条)

労働契約と雇用契約の違い

雇用契約とは、民法に規定された契約のひとつです。「当事者の一方が労務を提供し、もう一方がそれに対して報酬を支払う」と約束することで成立します。

一方、労働契約は、「労働者が使用者の指揮命令下で働くこと」が明確化されているため、2つは厳密には異なるといえます。

もっとも、実務上「労働契約」と「雇用契約」はほぼ同じ意味で使われることが多いため、そこまで違いを意識する必要はないでしょう。

労働契約と業務委託契約の違い

業務委託契約とは、「一方(受託者)が他方(委託者)から委託・注文された特定の仕事の処理や仕事の完成を約束し、委託者がその対価として報酬を支払うこと」を約束する契約です。

労働契約との一番の違いは、業務委託契約の当事者は「労働者」と「使用者」の関係ではないということです。当事者はあくまで対等な立場であり、委託者が受託者に対して具体的な指揮命令を行うことはできません。

なお、形式的には業務委託契約であるにもかかわらず、実際には注文者の指揮命令下で働いているような場合、「偽装請負」にあたり違法とみなされる可能性があります。

労働契約の基本原則

労働契約法3条には、次のように、労働契約の締結や変更に関する5つの基本原則が定められています。

  • 労使対等の原則
    当事者である労働者と使用者が対等な立場で行った合意がなければ、労働契約を締結・変更できない。
  • 均衡考慮の原則
    労働契約を締結・変更するときは、就業の実態に見合った内容にしなければならない。
  • 仕事と生活の調和ヘの配慮の原則
    使用者は、労働契約を締結・変更する際には、労働者のワーク・ライフ・バランスの実現に配慮しなければならない。
  • 信義誠実の原則
    労働契約を結んだ当事者は、信義誠実の原則に基づき、信義に従って誠実に労働契約を守らなければならない。
  • 権利濫用の禁止の原則
    労働契約の当事者は、たとえ労働契約に基づき与えられた権利であっても、これを濫用することは認められない。

労働契約の締結

労働契約は口約束でも成立しますが、それだけでは後でトラブルとなるリスクがあります。そこで使用者には、労働者に対して一定の労働条件を明記した書面(労働条件通知書など)の交付が義務付けられています(労基法15条1項、労働基準法施行規則5条4項)。

労働契約の締結にあたり、使用者は、労働者が契約の内容をきちんと理解したうえで労働できるよう努めなければなりません(労契法4条1項)。また、労働契約の内容は可能なかぎり書面で確認することが求められています(同条2項)。

労働条件の明示義務

労働契約を結ぶ際、使用者は労働者に労働条件通知書を送付するなどして、労働条件を明示しなければなりません。
具体的には、次に挙げる絶対的明示事項と相対的明示事項の明示が義務づけられています。

●絶対的明示事項(必ず示さなければならない労働条件、労基法施行規則第5条第1項)

  • ①労働契約の期間に関する事項
  • ②期間の定めのある労働契約を更新する基準
  • ③就業の場所及び従事すべき業務
  • ④始業及び終業の時刻、時間外労働の有無、休憩時間、休日、休暇等に関する事項
  • ⑤賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。) の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • ⑥退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

●相対的明示事項(使用者が決まりを設けている場合に示さなければならない労働条件)

  • ①昇級に関する事項
  • ②退職手当の定めが適用される労働者の範囲等に関する事項
  • ③臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与等に関する事項
  • ④労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  • ⑤安全及び衛生に関する事項
  • ⑥職業訓練に関する事項
  • ⑦災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • ⑧表彰及び制裁に関する事項
  • ⑨休職に関する事項

なお、絶対的明示事項は、2019年4月から電子メールによる明示も可能となりました。
なお、相対的明示事項は口頭で伝えても構いませんが、後のトラブルを避けるため書面等を交付するのが望ましいでしょう。

労働条件の明示義務について、詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

労働条件の明示義務

労働契約の期間

正社員のような「雇用期間に定めのない労働契約」の場合、基本的に定年や退職を迎えるまで契約は継続します。契約期間中の契約解除(解雇)は法律で厳しく制限されているため、使用者は注意が必要です。

一方、契約社員や嘱託職員のような「雇用期間に定めがある労働契約(有期労働契約)」の場合、契約期間の上限は原則「3年」です。ただし、弁護士や医師など専門性の高い業種や、満60歳以上の労働者については、例外的に「5年」が上限とされています。

なお、有期労働契約の期間を労働者に明示していなかった場合、「期間の定めなし」ととられるため、企業が一方的に契約を終了させることは基本的にできません。

また、契約期間が満了しているにもかかわらず、更新手続きをせずそのまま勤務しているような場合、自動的に「期間を定めない契約」に移行したとみなされる可能性もあります。

有期労働契約のルールや注意点は、以下のページで詳しく解説しています。

有期労働契約とは?締結や更新、解雇などの基礎知識

労働契約の変更

労使双方の合意があれば、労働契約(労働条件)の内容は変更することができます。
ただし、「賃金を減額する」「手当を廃止する」ような労働条件の不利益変更を行う場合、基本的に労働者から個別に同意を得ることが必要です。

なお、変更の必要性や合理性が客観的に認められれば、就業規則の変更によっても不利益変更は可能ですが、いずれにせよ労働者には十分説明を行う必要があります。

労働条件の変更が決定したら、その内容を記載した「労働条件変更通知書」を作成・交付するのがおすすめです。
労働条件変更通知書の作成に法的な義務はありませんが、労働者が変更点を確認したり、後のトラブルを防いだりするのに有効な書類ですので、必ず用意するようにしましょう。

もっとも、不利益変更は特に労働者とトラブルになりやすいため、弁護士などの専門家に相談しながら慎重に進めることをおすすめします。

労働契約の終了

期間の定めのない労働契約は、定年退職、休職期間満了による自然退職を除くと、主に次のいずれかによって終了します。

  • 退職:労働者からの申し出によって労働契約を解約すること
  • 合意解約:労使間の合意によって労働契約を解約すること
  • 解雇:使用者が一方的に労働契約を解約すること

これらのうち、「退職」は使用者の許可がなくても、申し込んでから2週間で成立します。
一方、解雇についてはとても厳しい要件が定められています。不当な解雇を行うと、解雇が無効になるおそれがあるため注意が必要です。

一口に退職や解雇といっても、それぞれ複数の種類があり、適切な対応も異なります。詳しくは以下のページで解説していますので、あわせてご覧ください。

退職・解雇

労働契約・就業規則・労働協約・法令の関係

契約上の労働条件が法令の定めと異なる場合、以下の優先順位に従います。

法令 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約

一番に優先されるのは、労働基準法等をはじめとする「法令(強行法規)」です。次に「労働協約(使用者と労働組合が合意のうえ定めた取り決め)」が、その次に「就業規則(使用者が定める、労働者が守るべき職場のルール)」が優先されます。

より優先度の高い内容に反した規定を設けることはできないので、労働契約は、他のどの規定にも反しない内容にしなければなりません。

例えば、就業規則で「時給1500円」と定められているのに、個別の労働契約でそれを下回る「時給1400円」などにすることは認められません。この場合、就業規則の内容(時給1500円)が労働者に適用されることになります。

就業規則や労働協約については、以下のページでさらに詳しく解説しています。

就業規則とは | 作成の意義と法的効力
労働協約とは?労使協定との違いや就業規則との関係について

労働契約の禁止事項

労働契約では、下の表に挙げるような契約を結ぶことはできません。
賠償予定 労働者が労働契約に違反した場合の違約金や、支払わなければならない損害賠償金の額をあらかじめ決めておくことです。
労働契約に賠償予定を盛り込むことはできません(労基法16条)。
前借金相殺 労働者が使用者から金銭を借りて、使用者がその後の賃金から一方的に天引きして返済させることです。
前借金相殺を労働契約に盛り込むことは禁止されています(労基法17条)。
強制貯金 賃金の一部を強制的に貯蓄させる、又は使用者が労働者の貯蓄金を管理することです。
たとえ社員旅行などの積立てであっても、強制貯金の規定を労働契約に盛り込むことは許されません(労基法18条1項)。
黄犬契約 労働者が労働組合に加入しないこと又は労働組合から脱退することを条件とする労働契約のことです。
このような労働契約は、労働組合の団結権を侵害するため禁止されています(憲法28条、労組法7条1号後段)。

これらの契約が禁止される理由は、労働者が企業によって不当に拘束されたり、使用者が一方的に労働者の行動を制限したりするのを防ぐためです。

労働契約法に違反した場合の罰則

労働契約法は民事上のルールを定めたものなので、罰則は設けられていません。よって、違反しても罰金や懲役が科されることは基本的にありません。

ただし、労働者から高額な損害賠償請求をされたり、社会からのイメージが悪化したりとさまざまなリスクがあるため、必ず守る必要があります。

例えば、企業が危険防止措置を怠り、労働者がケガをしたような場合、安全配慮義務違反(労契法5条)として損害賠償責任を負う可能性があります。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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