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未成年・年少者雇用の労働契約

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

未成年者・年少者を労働者として雇用する際には、労働基準法などの労働関連法令に定められている保護規定や制約を遵守しなければなりません。それらに違反した場合、罰金刑や懲役刑に処せられるおそれもありますので、使用者として熟知しておく必要があります。

このページでは、未成年者・年少者との労働契約に関して詳しく解説します。

未成年者の労働契約締結について

労働基準法58条1項により、未成年者に代わって親権者・後見人が労働契約を結ぶことは禁止されています。未成年者を雇用する際、使用者は、親権者や後見人ではなく、未成年者本人と労働契約を締結しなければなりません。

雇用可能な最低年齢

労働基準法56条1項では、満15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了するまでの児童を、労働者として使用してはならないと定めています。つまり、義務教育である中学校を修了するまでの児童は、労働者として雇用できません。

未成年者、年少者、児童のそれぞれの区分に関しては、以下のページで解説していますので、ご参照ください。

未成年・年少者雇用

未成年者との雇用契約に親権者の同意は必要か

民法5条では、未成年者が法律行為をする際には、その法定代理人の許可を得なければならないと定めています。

法定代理人とは、未成年者本人に代わって身分上及び財産上の管理・監督・保護をする権利を持つ者をいいますが、ほとんどの場合は親権者がこれにあたります。親権者がいない場合は、未成年後見人が法定代理人となります。

未成年者を雇用する際は、この法定代理人の同意を得なければならないことに注意が必要です。

年少者との雇用契約に学校の許可は必要か

満18歳未満の年少者を雇用する際、学校の許可を得なければならないという定めは、法令にはありません。しかし、校則でアルバイトを禁止されている場合や、勉学や部活動の差支えとなったりする場合も想定され、雇用した後に学校に発覚し、学校や親権者等との間でトラブルに発展するケースも少なくありません。年少者を雇用する際は、学校の許可を得ているかについて、事前に本人によく確認するべきでしょう。

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年少者の年齢証明書等の備付け

労働基準法57条1項では、年少者を雇用する場合、使用者はその年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならないと定めています。これは、年少者の就労について、労働基準法上、特別の保護規定があり、それがきちんと実施されているか監督を行うためのものです。

戸籍証明書とは、以前は戸籍謄本、戸籍抄本と呼ばれていたものですが、現在はそれぞれ戸籍全部事項証明書、戸籍個人事項証明書と名称が改められました。自治体の市区町村役所が発行することに変わりはありませんので、年少者を雇用する際は必ず提出してもらうようにしましょう。

未成年・年少者の労働条件について

未成年者・年少者を労働者として雇用する際は、その健全な成長や教育機会を阻むことがないよう、健康及び福祉の観点から、労働条件にいくつかの制限があります。以下の項目で、解説します。

労働時間・休憩・休日

年少者を雇用する際は、労働時間、休憩、休日について、成人労働者とは別途、制限があります。例えば、労働基準法における時間外労働・休日労働(労基法36条)、事業の特殊性による労働時間・休憩の特例(労基法40条)は、年少者は適用除外とされています(労基法60条)。

未成年者・年少者の労働時間や休憩、休日に関しては、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

未成年・年少者における時間外・休日の制限

深夜労働の制限

深夜労働に関しては、満18歳以上の労働者に対しては、割増賃金の支払いが義務づけられているのみです。一方で、満18歳未満の年少者に関しては、使用者は、原則、深夜労働をさせてはならないという規定があります(労基法61条1項)。

未成年者・年少者の深夜労働に関しては、以下のページで詳しく解説しています。ぜひご参照ください。

未成年・年少者の深夜労働

危険有害業務の制限・坑内労働の禁止

年少者は、心身ともに未成熟であり、また技術的にも成人よりも未熟であるケースが多いため、労働基準法では年少者が就くことができる業務に制限や禁止を設けています。例えば、運転中の機械・動力伝動装置の危険な部分の掃除・注油・検査・修繕などの「危険有害業務」とされるものや坑内労働は、満18歳未満の者には就かせてはならないと定められており、禁止されています(労基法62条、63条)。

年少者に対する危険有害業務の制限、坑内労働の禁止などについては、以下のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。

未成年・年少者の危険有害業務の制限

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未成年者への賃金の支払い

労働基準法24条1項により、賃金は、通貨で、労働者に直接支払うことが定められています。また、同法59条では、未成年者は独立して使用者への賃金の請求権を持つこと、親権者・後見人が本人に代わって賃金を受け取ってはならないことを定めています。

これらの規定により、未成年者を雇用した場合、使用者は労働した未成年者本人に賃金を支払わなければなりません。

労働契約の解除に伴う年少者の帰郷旅費

労働基準法64条では、満18歳未満の者が、解雇の日から14日以内に帰郷する場合、使用者は必要な旅費を負担しなければならないと定められています。ただし、解雇の理由が本人の責めに帰すべきものであり、行政官庁から認められた場合には、この義務を負いません。

親権者等による労働契約の解除

労働基準法58条2項では、親権者、後見人、行政官庁(労働基準監督署)は、未成年者が締結した労働契約が本人にとって不利なものである場合は、本人に代わってその労働契約を解除できると定めています。

これは、例えば劣悪な環境で労働させられたり、過重労働を強いられたりして健康被害が出ているような場合や、最低賃金を下回る低賃金で労働させられている場合など、未成年者が不利な労働条件下に置かれている場合等に、その保護をできるようにという意図によります。

親権者や後見人は、未成年者本人に代わって労働契約を締結することは禁じられていますが、その解除は可能ということになります。

違反時の罰則

未成年者、年少者に関しては、労働基準法においてさまざまな保護規定や制約があり、それに違反した場合は、使用者が罰金刑や懲役刑を科されるおそれもあります。

例えば、満15歳に達した後の最初の3月31日が終了するまでの児童を使用してはならないと定めている労働基準法56条1項に違反した場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(労基法108条)。また、満18歳未満の者を雇用する際に使用者に義務づけられている、戸籍証明書等の備付けを怠った場合、30万円以下の罰金に処せられます(労基法120条)。

上記の例のほかにも、未成年者、年少者の雇用に関しては、規定に違反したり、義務を怠ったりすると罰金刑や懲役刑を科されるおそれがある法令が多々あります。未成年者、年少者を雇用する際、使用者は法令をしっかりと把握し、遵守する必要があります。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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