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採用と内定の違い|通知書の内容や企業の注意点など

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

厳しい雇用情勢の中、会社と応募者双方の意向がようやく合致し、いよいよ「採用内定」という段階で、ちょっとした不備から大きなトラブルに転じてしまった…といった事態は避けたいところです。

このページでは、会社の採用担当者の方等に向けて、採用と内定、内々定との違いや、採用内定の通知方法、採用内定を取り消す際の注意点、内定辞退への対応などについて解説していきますので、ぜひご一読下さい。

採用と内定の違い

「採用」と「内定」は、会社の採用活動において同じような意味合いで使われることが多々あります。

しかし、「採用」と「内定」では、労働契約の成立や法的拘束力の有無など、法律上の取扱いに大きな違いがあります。混同して使うと、当事者の認識の違いから労使トラブルを招くリスクがあるため、採用と内定の相違点を把握しておくことが重要です。

具体的にどのような違いがあるのか、次項で詳しく見ていきましょう。

なお、以下のページでは、「採用」に関する基本的な事項について広く解説しています。ぜひこちらも併せてご覧下さい。

労働者の採用|労働契約の成立要件や労働条件の明示義務

採用とは

「採用」とは、応募者がすべての採用選考過程に通過し、合格している状態をいいます。
つまり、会社が採用選考に合格した応募者に対して、自社に入社してほしいという採用の意思を伝えた状態であることを意味します。

この段階においては、選考試験に合格しているだけであり、採用選考プロセスを通過した応募者が改めて入社に同意しているわけではありません。
実際に入社してもらうには、応募者の入社意思を改めて確認することが一般的で、入社意思の確認がとれた段階で、正式に「内定」が決まることになります。

※なお、「採用」という言葉は多義的で、上記とは異なる意味で使われることもありますが、このページでは上記の意味で「採用」という言葉を用います。

内定とは

「内定」とは、すべての採用選考に通過した応募者と会社の間で、雇用について合意している状態、つまり労働契約が成立している状態をいいます。

求人への応募は応募者による労働契約の申し込みであり、会社がこれに応じて内定通知を出すことがその申し込みへの承諾(=労働契約の成立)になると一般的に解されています。この内定によって成立する労働契約を「始期付解約権留保付労働契約」といい、内定が決まると、基本的に、会社と内定者との間に法的拘束力が生じることになります。

そのため、内定を会社側から一方的に取り消すことは、正社員の解雇と同じく、合理的な理由がなければ、基本的に違法とされるため注意が必要です。

内定と内々定の違い

「内々定」とは、会社が応募者に対して将来内定を出すことを約束した状態をいいます。メール等で「〇月〇日に内定を出す」旨通知するのが通例です。
内々定は、新卒採用で多く使われています。これは、政府の要請により、会社が新卒者に内定を出せる日が「応募者の卒業・修了年度の10月1日以降」と定められているからです。この正式な内定日以前に、優秀な学生を確保するためにとられる方法が「内々定」です。

なお、「内定」と「内々定」との違いは、労働契約の成否にあります。
「内定」では労働契約が成立しますが、「内々定」は、正式な内定成立前の段階であるため、労働契約が成立しておらず、法的拘束力は発生しません。そのため、内々定を会社側から取り消しても、基本的に違法とされません。

ただし、会社が内々定を通知する際に、他社の選考を辞退して就職活動を終了させる要請採用を確信させる言動を行ったような場合は、応募者の期待利益の侵害ないし信義則違反として、会社に損害賠償責任が認められる場合もあります。

採用内定の通知方法

採用と内定が確定すると、会社は対象の応募者に対して、それぞれ「採用通知書」と「内定通知書」を発行し、採用する意思があることを示します。
ここで、一見すると区別がしにくい「内定通知書」と「採用通知書」の違いを確認しておきましょう。

採用通知書

採用通知書とは、採用選考に合格した応募者に、採用の決定を知らせる書類をいいます。
発行は義務ではないため、発行の有無や発行時期、記載項目などは会社側の判断に委ねられます。

採用通知書には法的な定義がないため、内定通知書と同じ扱い・運用としている会社もありますが、このような場合を除けば、基本的に採用通知書には応募者の入社意思を問う意図がありません。あくまでも会社からの一方的な採用通知に留まります。

採用通知書は最終面接から約1週間以内にメールで送付されるのが通例で、主に以下の項目が記載されます。

  • 採用決定のお知らせ
  • 入社の意思確認方法
  • 入社予定日
  • 入社までに提出する書類(入社承諾書、身元保証書など)
  • 返信・対応期限
  • 採用が取り消しになる条件
  • 採用担当者の連絡先

内定通知書

内定通知書とは、採用選考を合格した応募者に、内定を知らせる書類をいいます。
採用通知後に応募者の入社意思を確認してから発行するものであるため、労働者からの労働契約の申込みへの会社の承諾を証拠として示す書類であるといえます。発行の義務はないため、発行の有無や方法、時期、記載項目などは会社側の裁量に任せられます。

内定通知書が発行された時点で、労働契約が成立し、法的拘束力が発生することが明確化されます。そのため、発効後はよほどの事情がない限り内定を取り消せなくなります。

内定通知書は、最終面接後1週間~10日以内にメールで送付されるのが通例で、主に以下の項目が記載されます。

  • 応募への御礼
  • 採用内定の通知
  • 入社日
  • 勤務地、勤務部署
  • 労働条件
  • 入社日までに準備しておくもの
  • 返送が必要な同封書類の返送期限
  • 内定の取り消し事由

採用内定の取り消し

基本的に、一度通知した採用内定を、会社側が一方的に取り消すことはできません。

例えば、入社直前になって正当な理由なく内定を取り消すなど、不適切な理由や手段により内定を取り消した場合は、内定取消しが無効と判断され、未払い賃金や慰謝料などの支払いが命じられる可能性もあります。これは、内定通知後の内定取消しが、社員の「解雇」に等しい行為であると判断されるからです。

ただし、内定取消しに正当な理由がある場合は、採用内定の取消しが認められるケースがあります。
以下で、採用内定の法的性質と内定取消しが有効とされるケースについて見ていきましょう。

採用内定の法的性質

採用内定の法的性質について、求職者の応募は労働契約の申込み、採用内定が申込みに対する承諾であるとして、会社と応募者間に「始期付解約権留保付労働契約」が成立すると一般的に解されています。そのため、会社は、採用内定により基本的に本採用と変わらない法的制約を受けることになります。

なお、「始期付解約権留保付労働契約」とは、労働契約の開始時期は決まっているが(=始期付)、それまでに内定を取消すべき事情が生じた場合は、会社は労働契約を解約する権利がある(=解約権留保付)という労働契約をいいます。採用内定は、労働契約が成立しているものの、会社が解約権を保持している点が、本採用との違いです。

内定取消しは労働契約の解約であるため、解雇とみなされ、正社員と同じ解雇権濫用法理が適用されます。つまり、内定を取り消すには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合でなければならず、そうでない内定取消しは無効となります。

内定取消しの際の注意点について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧下さい。

内定取り消しの際に違法とならないための注意点

内定者の事由による取り消し

内定者の事由による内定取消しとは、内定者自身に責任があったり、健康に問題が生じたりしたような場合が挙げられます。内定者側の言動や行動などから、内定取消しが認められるケースとして、以下が挙げられます。

  • 学校を卒業できなかった場合
  • 内定した職種や業務に必要な免許や資格が取得できなかった場合
  • 病気やケガによって健康状態が悪化し、働くことが困難となった場合
  • 応募書類の記載内容や面接での受け答えに重大な虚偽が発覚した場合
  • 内定後に犯罪歴や問題行動が明らかになった場合
  • SNSで不適切な言動を行った場合

企業側の都合による取り消し

内定取消しは解雇とみなされます。そのため、会社都合による内定取消しが認められるのは、基本的に整理解雇の要件を満たした場合のみに限定されています。
整理解雇の要件として、以下が挙げられます。

  • 大規模な災害や経営状況の急激な悪化など、人員削減に高度な必要性があること
  • 労働者への事情説明や協議が十分かつ丁寧に行われていること
  • 整理解雇を回避する経営努力を行ったが、それでも避けられないこと
  • 解雇対象者の人選を合理的かつ公正に行っていること

会社側の都合による一方的な内定取消しは、内定者に多大な不利益を与えるだけでなく、企業イメージの悪化を招くリスクもあるため、慎重に対応することが必要です。

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内定辞退への対応

会社が内定通知書を送付し、内定者が入社承諾書を返送していても、内定者には内定辞退(=労働契約の解約)を申し入れる権利があります。
会社にとっては大きな損失ではありますが、労働者には職業選択の自由がありますので、入社日の2週間前までの申入れであれば、基本的には理由を問わず内定辞退を認めることとなります(民法627条1項)。

ただし、内定者が2週間の予告期間もなく、入社日ギリギリのところで内定辞退を申し入れてきた場合等、会社からの信頼を裏切る不誠実な態様で内定辞退がなされた場合には、非常に稀ではあるものの、内定者に対して損害賠償責任を問うこともあります。

民法
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)第627条

1当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

内定辞退を防止する方法

より希望に合う会社から内定を得たなどの理由から、内定通知後にも内定辞退が発生する可能性があります。しかし、会社としては採用にかけた費用や労力などに照らして、内定辞退はできる限り避けたいところでしょう。
内定後の辞退を防止するためには、内定後から入社までのフォローを積極的に行って、内定者の不安や迷いを取り除き、入社意欲を高めることが重要です。

内定辞退を防止するために有効な方法として、以下が挙げられます。

  • 内定者面談の実施
  • 内定者ごとに大学OBなどのフォロー担当をつけて、個別対策をとる
  • 入社前研修・課題の実施
  • インターンシップ(就業体験)の実施
  • 経営陣との交流会の実施
  • 職場見学会による業務内容の把握
  • 社員との懇親会の実施
  • 同期の内定者との懇親会など各種イベントの実施

採用内定を出す際の注意点

書面による通知書の提示

“採用内定の通知”は、会社と内定者間に法的拘束力が生じる重要な行為です。その通知方法について法的な定めはありませんので、会社の判断で書面ではなく口頭による通知を選択することも可能ではあります。

しかし、口頭では通知したことの証拠が残らないため、労使間に認識の齟齬があった場合等にトラブルに発展しかねません。したがって、書面による通知方法がベストといえます。

決定後の迅速な連絡

採用や内定が決定したら、迅速かつ丁寧に応募者に連絡するようにしましょう。

新卒か中途にかかわらず、応募者は複数の会社の選考を並行して受けていることが通例です。採用や内定の通知が遅れると、他の会社へ入社を決めてしまう可能性があります。優秀な人材を取り逃さないようにするためにも、採用や内定の通知はスピーディーに行うことが重要です。

採用の通知後、応募者の内定承諾の意思を確認できたならば、すぐに内定通知書を発行します。採用の通知、内定承諾の確認、内定通知書の発行といった一連の手続きは、最終面接から1週間以内を目安に行うのが望ましいでしょう。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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