初回1時間 来所・zoom相談無料

0120-630-807

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません 会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。

人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

インターンシップ制度とは|給料の支払い義務や企業側のメリットについて

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

学生の就業体験である「インターンシップ」ですが、インターンシップの名称使用方法や取り扱いについて定めた「インターンシップの推進にあたっての基本的考え方」(文科省、厚労省、経産省の3省合意)が2025年より変更されます。

プログラムのタイプが細分化されるとともに、一定の条件を満たさなければインターンシップと扱われなくなるため企業は注意が必要です。

とはいえ、インターンシップには企業にもさまざまなメリットがあるため、積極的に実施すべきでしょう。

本記事では、変更後のインターンシップ制度の概要や注意点などを詳しく解説していきます。

インターンシップ制度とは

インターンシップ制度とは、学生が将来のキャリア形成のために行う「就業体験」のことをいいます。興味のある企業で実務に触れ、就職活動などに活かすことが主な目的とされています。

現在多くの企業がインターンシップを実施していますが、2023年にルールが変更され、一定の条件を満たさなければ、インターンシップとして扱われないことになりました。

この変更が適用されるのは、「2025年3月に卒業・修了する学生(学部生ならば2023年度に学部3年生に進学する学生)が、2023年度に参加するインターンシップから」となります。

この変更の背景には、以下の課題があるとされています。

  • 実質的には会社説明会なのに、「インターンシップ」という名称のプログラムが多いこと
  • 多くの学生が、インターンシップに参加すれば就職活動で有利になると考えていること

これらの課題を解消するため、「インターンシップ」の名称使用について、その要件が厳格化されることとなりました。

インターンシップの類型

インターンシップの目的は、「学生のキャリ形成を支援すること」です。新ルールでは、この取り組みを以下4つの類型に分類しています。

このうち、インターンシップと呼べるのは「タイプ3」と「タイプ4」のみです。
要件は、実施期間の半分以上を就業体験にあてることや、学生にフォードバックを行うことなどがあります。また、卒業・修了前年度の長期休暇中に実施するのが基本です。

なお、この2タイプに限り、インターンシップで得た学生情報を採用活動に使用することも可能です。

汎用的能力・専門活用型インターンシップ

汎用的能力・専門活用型インターンシップとは、職場での実務体験をとおし、学生が自身の能力や適性を見極めるための制度です。企業独自のプログラムのほか、大学が自治体や機関と連携して実施するプログラムもあります。

主に、以下のような違いがあります。

【汎用的能力活用型】
専攻や分野を問わず、幅広い学生が参加できるプログラムです。ただし、募集要項の「就業体験時に求められる能力」については、具体的に記載する必要があります。

【専門活用型】
特定の専門知識や専門能力をもつ学生に向けたプログラムです。募集時に専攻を指定するなど、参加対象者を限定するのが基本です。
募集要項の「就業体験時に求められる能力」には、より詳細な要件を記載しなければなりません。実施期間も2週間以上と長いです。

高度専門型インターンシップ(試行)

高度専門型インターンシップとは、より高度な専門性をもつ学生が、実践力を向上させるための制度です。参加対象者は主に大学院生となります。
代表的なのは、以下の2パターンです。

【ジョブ型研究インターンシップ】
理系の大学院生が企業で研究を行い、その評価によって学校の単位を取得するインターンシップです。制度は“有給”で、実施期間も2ヶ月以上と長いのが特徴です。
また、評価結果を採用に反映できるため、「ジョブ型雇用」を見据えた制度ともいえます。

【高度な専門性を重視した修士課程学生向けインターンシップ(仮称)】
文系の大学院生を対象にした“有給”のインターンシップです。詳細は未定ですが、こちらも学生の評価結果は採用に反映できる予定です。

インターンシップ生は労働者となるのか

企業との間に使用従属関係が認められる場合、インターン生も労働者とみなされます。具体的には、以下のような要件を満たす場合です。

  • 使用者から業務遂行に関する指揮命令を受けている
  • インターン生に対して報酬が支払われている
  • インターン生の作業によって、企業に利益・効果がもたらされている
  • 見学型や体験型ではない

労働者にあたると、インターン生にも労働基準法などの労働関係法令が適用されます。そのため、通常の社員と同じく、労働時間の管理や労働条件の通知などが必要となります。

労働者性の判断基準については、以下のページでも詳しく解説しています。

労働者性の判断基準

インターンシップ制度のメリット・デメリット

インターンシップを実施するメリット・デメリットには、以下の点があります。

【メリット】

  • 取得した学生情報を採用活動に使用できる
    インターンシップで得た学生情報は、採用に反映することができます。これにより、自社に合う優秀な人材をスムーズに獲得できるでしょう。
  • 学生とのミスマッチを防げる
    実施期間が長いため、学生は企業の社風や業務内容をしっかり理解することができます。そのため、入社後のミスマッチが少なく、離職防止にもつながります。
  • 採用期間を短縮できる
    インターンシップである程度の採用候補者を見つけることで、通常の採用活動を短縮できることもあります。

【デメリット】

  • 社員の手間が増える
    長期のインターンシップでは、準備や資料の作成に手間がかかります。また、社員の参加が必要なものもあるため、実施時期も調整する必要があります。
  • 志望度が下がるおそれがある
    業務の難易度が高すぎると、学生が萎縮し、志望度を下げてしまう可能性があります。リアルな働き方を伝えるのは重要ですが、実施内容には工夫が必要でしょう。

インターンシップ制度における給料の支払

企業の間に「雇用関係」が成立すれば、インターン生にも賃金を支払う必要があります。

雇用関係とは、当事者の一方が労務を提供する代わりに、もう一方が報酬を支払うと約束することをいいます。
実際に雇用契約書を交わしていなくても、インターン生が“労働者”にあたる場合、雇用関係が成立しているとみなされる可能性があるため注意が必要です。

労働者にあたるかは、「企業がインターン生に指揮命令が行っているか」、「学生の作業によって企業に利益や効果がもたらされているか」などを考慮して判断されます。

インターン生の賃金の相場は、時給1,000~2,000円程度となっています。また、営業職では、売上や契約件数に応じてインセンティブが支給されるケースもあります。

なお、賃金の支払いルールについては、労働基準法で明確に定められています。詳しくは以下のページをご覧ください。

賃金の支払いに関する労働基準法の定めについて

最低賃金法の適用

インターン生に労働者性が認められると、最低賃金法が適用されます。
そのため、都道府県別の最低賃金を下回る報酬額を取り決めることは違法であり、無効となります(最賃法4条)。また、企業には罰則が科せられるおそれがあります。

以下のページでは、最低賃金の概要や、違法とされた場合の罰則について詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

最低賃金制度とは|目的や企業の義務、罰則などをわかりやすく解説

割増賃金の発生

インターン生に労働者性が認められる場合、労働時間によっては割増賃金が発生します。
具体的には、1日につき8時間、1週につき40時間の法定労働時間を超えて労働させた場合、正規の従業員と同じく一定の割増賃金(残業代)を支払わなければなりません(労基法37条)。

割増賃金の計算方法などは、以下のページで詳しく解説しています。

割増賃金とは|割増賃金率や基礎となる賃金の計算方法について

インターンシップ中の安全配慮義務

インターン生が労働者にあたるかどうかにかかわらず、受け入れ企業はインターン生への安全配慮義務を負います。
そのため、例えば企業側の設備点検が不十分だったために事故が起き、インターンシップ生が怪我を負う等した場合、企業に損害賠償責任が生じます。

安全配慮義務の詳細は、以下のページをご覧ください。

労働安全衛生法とは|事業者の義務や改正内容をわかりやすく解説

労災保険の適用

インターン生が労働者にあたる場合、労災保険が適用されます。そのため、インターン中の事故によって怪我を負ったり、後遺症が残ったりした場合、労災保険から補償を受けることができます。
一方、賃金が支給されない1日限りのインターンシップなどでは、労働者性が認められず労災保険は適用されないのが基本です。

ただし、大学の正課としてのインターンシップでは、大学を窓口とする「学生教育研究災害傷害保険」から補償を受けられる可能性があります。
これに未加入の場合、企業及び学生個人が加入する一般の傷害保険等で対応することになるでしょう。

労災に関する注意点などは、以下のページでも解説しています。

労働災害

インターンシップ中のハラスメント対策義務

2022年4月より、事業主は職場での「パワーハラスメント防止措置」を講じることが義務付けられました。具体的には、以下4つの措置を実施することが求められます。

  • 企業の方針を明確化し、社内で周知・啓発すること
  • 相談窓口を整備し、利用方法などを周知すること
  • パワハラが発生した場合、速やかに対応すること
  • 相談者のプライバシー保護に努めること、また、相談による不利益取扱いを禁止すること

これらの措置は、社員だけでなくインターン生にも適用するのが望ましいとされています。このことはインターン生が労働者に該当するか否かを問いません。

なお、措置を実施しなくても罰則はありませんが、被害者から損害賠償請求される可能性があります。また、インターン生の場合、企業イメージが下がり採用活動に支障が出るおそれもあるため注意が必要です。

ハラスメントの内容について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

企業におけるハラスメント対応|3つの対策や発生時のフローなど

インターンシップ生の社会保険の加入義務

次の条件にあてはまるインターン生は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させる必要があります。

労働時間が通常雇用の従業員の4分の3以上であること

例えば3ヶ月間の有給インターンシップで、通常の所定労働時間が8時間のところ、1日6時間以上労働させる場合、社会保険に加入させる必要があります。

雇用保険法の適用

雇用保険の加入条件は、以下のとおり定められています。

  • 週の労働時間が20時間以上であること
  • 雇用見込みが31日以上であること

もっとも、学生の本業は“学業”であり“仕事”ではないので、基本的に雇用保険に加入させる必要はありません(雇用保険法6条4項)。
ただし、以下に該当するインターン生については、学業が本業とは限らないため、雇用保険への加入が必要となる可能性があります。

  • 休学中
  • 夜間、定時制、通信制学校の学生
  • 卒業後もインターン先で継続して働くことが予定されている者

外国学生へのインターンシップ

海外の大学に在学中の学生を日本の企業で受け入れる際は、先方の大学と企業との契約に基づき、“大学の教育課程”の一環としてインターンシップを行うことになります。
“教育課程の一環”のため、インターンシップによって単位を取得させなければなりません。

また、日本の企業で働くには「在留資格」が必要となります。
在留資格は、受け入れ企業が、インターンシップの職務内容、滞在期間、賃金支給の有無に応じたものを取得する必要があります。

必要な在留資格の種類や滞在期間については、以下のページで解説しています。

外国人研修・技能実習生について

インターンシップ採用時の注意点

インターン生の情報を採用活動で使用することはできますが、その旨をはっきり伝えるのは避けましょう。例えば、「採用に直結する」「本採用で有利になる」などと伝えるべきではありません。

なぜなら、本来インターンシップは学生のキャリア形成の場に過ぎず、選考活動にはあたらないからです。就職を確約するものではないですし、実際の選考では改めてエントリーが必要ですので、その点は学生にも認識してもらう必要があります。

なお、インターンシップで得た学生情報を採用活動で使用する場合、その旨を募集要項に明示しておくことが必要です。

採用時の差別の禁止については、以下のページで詳しく解説しています。

雇用における差別について

インターンシップによる企業への損害とリスク対策

インターンシップによって損害が発生した場合に備え、リスク対策を講じることが重要です。
例えば、インターン生が会社の設備やソフトを壊した場合や、機密情報を漏えいした場合、事故を起こして社員に怪我を負わせた場合などが考えられます。

これらのケースでは、企業がインターン生に対して損害賠償請求できるのが基本です。しかし、損害額などによっては、学生が個人で賠償できないこともあるでしょう。
そのため、インターン生にはインターンシップ開始前に十分な研修を行い、注意を促すことが重要です。

また、インターン生が企業や社員に負わせた損害をカバーできる「インターンシップ保険」にも加入しておくと安心です。

契約書の作成

インターンシップでは、契約書の作成が法律で義務付けられているわけではありません。

ただし、雇用契約が認められる場合、企業は学生に労働条件を通知する義務があるため、「雇用契約書」又は「労働条件通知書」を交付する必要があります(労働基準法15条1項)。

また、雇用契約がない場合も、インターン中のトラブルを防止するため、契約書を取り交わしておくことをおすすめします。

  • インターンシップを行う時間や場所、期間
  • インターンシップの内容
  • 期間中にインターンシップを終了する事由
  • インターンシップ中に発生した事故の取扱い
  • インターン生が生じさせた損害の賠償義務
  • 秘密保持義務
  • 遅刻や欠勤の連絡方法

誓約書の必要性

トラブルを回避するために、契約書とは別に誓約書を取得することも一つの対策といえます。

例えば、誠実にインターンシップに参加することや、インターンシップ中に知り得た情報の不正使用を禁ずること、成果物は受け入れ企業に帰属することといった内容を記載します。

誓約書によって、研修や実習、秘密保持義務等に対してより高い意識を持たせることができるでしょう。「誓約」させることで義務感が生まれ、トラブルの発生防止にもつながります。

また、もしトラブルが発生しても、誓約書を根拠に損害賠償などを求めることができます。

ちょこっと人事労務

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

企業側人事労務に関するご相談 来所・zoom相談無料(初回1時間)

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません。

0120-630-807

受付時間:平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00

0120-630-807

平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます