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障害者雇用の合理的配慮とは|具体的な事例や流れ、罰則など

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

障害者を雇用する場合、事業主は「合理的配慮」を提供することが法的に義務付けられています。
事業主は、障害者本人の希望を踏まえたうえで、ひとりひとりに合った適切な配慮を提供することが重要です。

本記事では、合理的配慮が必要な労働者の範囲、合理的配慮の具体例、配慮を提供するまでの流れなどについて詳しく解説していきます。

障害者雇用の合理的配慮とは

合理的配慮とは、障害のある人とない人が平等な生活を送れるよう、適切な措置を講じることをいいます。事業主は、「障害者差別解消法」と「障害者雇用促進法」において、職場で障害者に対して合理的配慮を提供することが義務付けられています

これらの法律は、どちらも“障害者の人権を保障すること”が目的ですが、以下のような点で違いがあります。

障害者差別解消法 日常生活や社会生活における障壁を取り除くための法律
障害者雇用促進法 職場における平等な待遇・機会を確保するための法律

例えば、耳が不自由な労働者のために筆談器を設置したり、身体への負担が少ない業務を振り分けたりするといった配慮が考えられます。

合理的配慮が普及した背景

合理的配慮の考えは1980年代頃から広まっていましたが、より普及するきっかけとなったのは2006年に国連で採択された「障害者権利条約」です。
障害者権利条約では、「合理的配慮を行わないこと=障害者に対する差別」であると明示され、国際的に障害者の権利を尊重することが求められました。

日本も2007年にこの条約に署名したことで、国内における障害者支援が一気に加速したといえます。具体的には、2011年に「障害者基本法」が改正されたほか、2013年の「障害者差別解消法」と「障害者雇用促進法」の成立によって、合理的配慮の提供が義務となりました。

障害者雇用促進法における合理的配慮義務

障害者雇用促進法では、募集や採用などの“雇用分野”において、事業主に過重な負担がかからない範囲で合理的配慮を提供することが義務付けられています。
具体的には、採用面接の方法や意思疎通の手段、採用後の業務内容や就労条件などを工夫し、障害者が十分に能力を発揮しながら働ける環境を整備することが求められます。

また、必要な配慮は“障害の程度”や“障害者の特性”によって異なるため、どのような措置を講じるかは本人へのヒアリングを通して個別的に検討することが重要です。
合理的配慮が必要な労働者や、対応が求められる範囲については、次項から解説していきます。

合理的配慮の対象となる障害者

障害者雇用促進法では、合理的配慮が必要な労働者の範囲について以下のように定めています。

「身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、その他の心身の機能の障害があるため長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」

これに該当する場合、障害者手帳を所有していなくても合理的配慮の対象となります。また、週の所定就業時間といった就労条件に関する要件もないため、合理的配慮が必要かどうかは個々の実態を踏まえて判断する必要があります。

ただし、“長期にわたる職業生活の制限”や“職業生活が著しく困難”といった要件はあるので、例えば怪我や病気で一時的に仕事をセーブしている場合や、症状が軽度で業務への支障が少ないような場合は、合理的配慮の対象外となるのが一般的です。

「過重な負担がかからない範囲」の判断基準

事業主に過重な負担がかかる場合、合理的配慮を提供する義務はないとされています。
しかし、その場合も「可能な範囲で何ができるか」を検討し、障害がある労働者の意見も聞きながら代替策を講じることが重要です。
“過重な負担”にあたるかは、以下の基準に沿って判断するのが一般的です。

判断要素 判断基準
事業活動への影響の程度 生産活動やサービス提供、事業活動に与える影響の程度
実現困難度 事業所の立地や建物の形態、機器や人材の確保、設備の整備などから、措置を講じるのが困難かどうか
費用負担の程度 措置を講じることによる費用負担の程度
企業の規模 企業の規模を踏まえた負担の大きさ
企業の財務状況 自社の財務状況に応じた負担の大きさ
公的支援の有無 措置の実施にあたり公的支援を受けられるかどうか

例えば、テナントビルに入っている会社が、ビルの共用部分をバリアフリー化することや、すべてのサービス窓口に手話通訳者を配置するといった配慮は、過重な負担にあたると判断される可能性があります。

職場における合理的配慮の事例

障害の程度や困っていることは人それぞれなので、本人にヒアリングしたうえで合理的配慮の内容を検討することが重要です。また、障害の種類も身体障害・精神障害・発達障害・知的障害の4つに分けられるため、それぞれの特性に合った配慮を提供する必要があります。

実際にどのような合理的配慮が行われているのか、障害の種類別に紹介していきます。

身体障害

身体障害には、視覚障害や聴覚障害、上肢・下肢障害などさまざまなものがあります。そのため、ひとりひとりに合った適切な合理的配慮を提供することが重要です。

〈身体障害における合理的配慮の例〉

  • 通勤ラッシュを避けるため時差出勤を導入する
  • 移動しやすいよう入り口近くの座席にする
  • 移動が少ない部署に配置する
  • スロープや手すり、高さ調節が可能な机などを設置する
  • 筆談やメールなど、口頭以外の連絡手段を活用する
  • 自動文字起こしソフトを導入する
  • 声で認識できるよう、必ず名前を名乗ってから話し出す
  • 必要に応じて、他の労働者が誘導する
  • 休憩スペースを設け、いつでも休めるようにする など

精神障害

精神障害とは、さまざまな精神疾患が原因で、日常生活に支障が出ている状態をいいます。うつ病やパニック障害、統合失調症、双極性障害などが原因となるケースが多いです。
心身が疲れやすいという特徴があるため、過度なプレッシャーがかかるような業務は避けるべきでしょう。
また、精神疾患は似ているようで特性は大きく異なるため、それぞれに適した合理的配慮を検討する必要があります。

〈精神疾患における合理的配慮の例〉

  • 人混みが苦手な場合、ラッシュ時間を避けた出勤時刻にする
  • 時短勤務から徐々に勤務時間を延ばす
  • ひとりで過ごせる休憩スペースを作る
  • カウンセラーと定期的に面談の場を設ける
  • 通院日に合わせて、柔軟に休暇の取得を認める
  • 作業手順をマニュアル化する など

発達障害

発達障害とは、脳機能の発達に遅れや偏りがあり、社会生活に支障が出ている状態をいいます。自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などが代表的です。
症状としては、コミュニケーションやタスク管理が苦手、落ち着きがない、過集中、指示を理解できないなど多岐にわたります。
業務が滞ると他の労働者にも影響が出やすいため、特に十分な配慮が必要です。

〈発達障害における合理的配慮の例〉

  • 指示を出す人を1人に固定する
  • 作業プロセスや納期、分からない場合の質問先まで、すべてマニュアル化して伝える
  • 一度に複数の指示を出さない
  • 定期的に声掛けをし、進捗状況を確認する
  • ひとりで休める休憩スペースを設ける
  • 音や光に過敏な場合、耳栓やパーティションの使用を許可する など

知的障害

知的障害とは、発達期までに生じた知的機能の遅れにより、日常生活に支障が出ている状態をいいます。
症状としては、指示を整理・理解できない、臨機対応な対応が苦手、コミュニケーション能力が低いこと等が挙げられます。

知的障害は程度によって軽度・中度・重度・最重度に分けられますが、合理的配慮は検討する際は、本人の意欲やスキル、体力なども考慮することが重要です。

〈知的障害における合理的配慮の例〉

  • 指示を出す人をひとりに固定する
  • 作業手順をマニュアル化する
  • 定期的に進捗状況を確認し、分からないことはすぐに質問してもらう
  • レクチャーを丁寧に行う など

合理的配慮を提供する流れ

合理的配慮を提供するまでの流れは、以下のとおりです。

  1. 本人からの申し出
  2. 配慮内容に関する話合い
  3. 合理的配慮の確定・実施
  4. 配慮内容の見直し・改善

①本人からの申し出

合理的配慮は「本人の希望に応じて行うもの」なので、どのような配慮が必要なのかを面接時などに確認しておく必要があります。
ただし、障害者の中には、自身に合理的配慮が必要であることを自覚していない人もいます。また、「障害があることを伝えたら不採用になるのではないか」と考え、言い出せない人も多いでしょう。

そのため、事業主は、応募者が安心して自身の障害を打ち明けられる環境を整える必要があります。
例えば、障害者だからという理由で不採用になることはない旨を説明したり、必要な合理的配慮について聞き取る時間をしっかり確保したりすることが重要です。

なお、採用時には障害があることを把握できなかったというケースもあります。この場合、雇用後に障害者であることが発覚した時点で、速やかに職場で支障になっている事情がないか本人に確認しなければなりません。

②配慮内容に関する話合い

合理的配慮の内容について、労使間で十分に話し合いを行います。本人が話し合いに消極的な場合、家族や支援者に聞き取りを行うのも良いでしょう。

なお、合理的配慮は事業主に過重な負担がかからない範囲で行えば良いとされています。そのため、経済的、立地的に配慮の提供が難しい場合、必ずしも本人の希望に応じる義務はありません。

また、実際に合理的配慮を提供する場合、配属部署の上司や同僚の理解も得る必要があります。しかし、障害の有無はプライバシーにあたるため、本人の許可なく広めるのは望ましくありません。
「部署に伝えても良いか」「障害の内容をどこまで伝えて良いか」などについて本人の意向を確認しておきましょう。

③合理的配慮の確定・実施

障害者との話し合いを踏まえて、具体的にどのような措置を講ずるかを検討します。
もし、障害者の希望通りの配慮を提供することが難しいという結論に至った場合、その理由を本人に説明するとともに、別案を検討する必要があります。

反対に、実施できる措置が複数ある場合には、話し合いを経てより実現しやすい措置を選択することも望ましいものと考えられます。

④配慮内容の見直し・改善

必要な合理的配慮は、障害の程度や本人の意思によって随時変化します。仕事に慣れることで、今ほどの配慮は不要になることもあるでしょう。
そのため、事業主は、現在実施している措置が適切かどうか、定期的に見直し・改善することが求められます。

障害者雇用の合理的配慮のために企業が整えるべき体制

事業主は、障害のある労働者のために次のような環境を整えなければなりません。

  • 相談体制の整備
    相談窓口の設置、相談への適切な対応、プライバシーを保護するための措置、不利益な取扱いの禁止等
  • 苦情の処理
    障害者からの「差別を受けた」「合理的配慮が受けられなかった」などの苦情について、相談窓口の担当者などを交えて話し合う等
  • 紛争解決の援助制度
    都道府県労働局長による助言を受ける、障害者雇用調停会議による調停制度を利用する等

これらの仕組みについては、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひ参考になさってください。

障害者雇用促進法における相談体制の整備、苦情処理、紛争解決の援助

合理的配慮義務に違反した場合の罰則

合理的配慮の提供義務に違反しても、罰則を受けることはありません。
ただし、事業主は雇用管理を改善するために必要な助言、指導、勧告といった行政指導を受ける可能性があります。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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