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長時間労働者への面接指導|法改正や実施の流れについて

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

長時間労働をしている労働者に対する面接指導は、過労死・過労自殺を予防するための重要な制度です。

長時間労働は肉体的・精神的負担が大きく、ダメージを受けた労働者が、過労死・過労自殺してしまったという話を耳にするかと思います。そのような労働者を増やさないためにも、使用者は対策を講じなければなりません。

この対策として、平成31年4月1日には、改正労働安全衛生法の施行により面接指導が強化されています。

本記事では、使用者が労働者の健康を保持するため、長時間労働者に対する面接指導の実施義務について説明していきます。

長時間労働者への面接指導とは

長時間労働者への面接指導とは、過労やストレスによる労働者の脳・心臓疾患や、メンタルヘルス不調の予防を目的とする措置です。面接指導では、産業医等の医師が、労働者の心身の状況について確認し、業務の過重性や疲労蓄積状況を評価することによって、労働者の健康を守ることを目指します。

面接指導は、対象となる労働者がいる全ての事業場で行わなければなりません。また、面接指導対象でない労働者に対しても、予防に関する指導が必要となります。

最近では、長時間労働によってうつ病等の精神的な病気にかかるメンタルヘルス不調をきたし、自殺に至ってしまう事件もあります。こういった事件は、長時間労働が原因となって労災認定されたことが多いため、企業にとっては金銭的な負担が生じるだけでなく、社会的な評価にも影響を及ぼします。そのような事態を避けるためにも、労働状況の管理と措置をきちんとする必要があります。

高ストレス者への面接指導

ストレスチェックの結果、高ストレスを抱えており、面接指導が必要であると判断された労働者についても面接指導が行われます。

ストレスチェックは、労働者が自身のストレス状態を知ることで、メンタルヘルス不調を防ぐために行うものです。ストレスチェックの結果、「高ストレス者」と判断され、その者より面接指導の申出があった場合は、使用者は面接指導を行わなければなりません。

なお、面接指導の申出に対する不利益な取扱いは禁止されています。

ストレスチェックに関して、より詳しい解説は下記のページをご覧ください。

ストレスチェック制度とは|実施義務や流れについて

労働安全衛生法改正による面接指導の強化

平成31年に、長時間労働等により健康リスクの高い状態にある労働者を見逃さないようにするために、労働安全衛生法が改正されて産業医の機能が強化されました。
改正の重要なポイントは、以下のとおりです。

  • 面接指導対象要件の拡大
    1ヶ月の時間外・休日労働が80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者について、面接指導の対象とされました。
  • 研究開発業務従事者、高度プロフェッショナル制度適用者に対する面接指導の義務化
    時間外・休日労働等が100時間を超える研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度適用者については、本人の申出がなくても、面接指導を行うことが義務化されました。
  • 対象者への情報通知義務
    1ヶ月の時間外・休日労働が80時間を超えた労働者に対して、速やかに労働時間に関する情報を通知しなければなりません。
  • 労働時間の把握義務
    タイムカードや、パソコンのログイン・ログアウト時間等、客観的な記録によって労働時間を把握しなければなりません。

以下では、この改正点をふまえて解説します。

面接指導の対象となる労働者の要件

面接指導の対象にするべきとされる労働者は、時間外・休日労働時間が1ヶ月あたり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者です。特に、1ヶ月に80時間を超える時間外・休日労働をしている者から、面接指導を受けるという申出があったときには、医師による面接指導を実施する義務が課せられています。

なお、面接指導の実施は、労働者から申出があった場合、おおむね1ヶ月以内に行うようにしましょう。

時間外・休日労働時間 申出の要否 違反時の罰則
一般労働者 月80時間超 必要
研究開発業務従事者 月80時間超 必要
月100時間超 不要
高度プロフェッショナル制度適用者 月100時間 不要

研究開発業務従事者の場合

研究開発業務とは、研究によって得た知識や技術によって、新たな商品を開発する業務です。

研究開発業務に従事する労働者には、残業時間の上限規制が適用されませんが、長時間労働している場合には、医師による面接指導を受けさせることが法改正によって義務化されました。

労働時間による面接指導の義務は、休日・時間外労働の時間によって、以下のようになっています。

  • 月80時間超:疲労の蓄積があって面接指導を申し出た者に行う(行わなくても罰則なし)
  • 月100時間超:申出がなくても、全ての者に行う(行わなければ罰則あり)

高度プロフェッショナル制度適用者の場合

高度プロフェッショナル制度とは、労働時間と成果の関連性が低い、高度に専門的な仕事をする年収1075万円以上の労働者について、労働時間ではなく成果によって賃金を支払う制度です。

本制度の対象者は、長時間労働をしてしまいかねないため、一定の基準で医師による面接指導を受けさせることが義務付けられています。この“一定の基準”とは、具体的に「1週間あたりの健康管理時間が40時間を超過した時間が、1ヶ月あたり100時間を超えたとき」をいいます。

この条件を満たす者に面接指導を受けさせなかったときには、罰則が適用されます。

※健康管理時間…労働者が「事業場内にいた時間」と「事業場外で働いた時間」の合計

派遣労働者への実施義務

派遣労働者に対する面接指導は、派遣先ではなく派遣元の企業に実施義務が課せられています。
しかし、派遣先の企業の使用者は、派遣労働者の労働時間を把握する等して、面接指導に必要な派遣労働者に関する情報を提供するといった協力をしなければなりません。

面接指導を実施する流れ

面接指導を実施する流れは、以下のようになっています。

  1. 労働時間の算定:80時間を超えたら通知しなければならない
  2. 労働者からの申出:産業医が面接指導の勧奨を行うことができる
  3. 医師による面接指導:社員の申出から、おおむね1ヶ月以内に行う
  4. 医師からの意見聴取:産業医が必要ありと判断すれば、事業者から意見を聴いたうえで、必要な措置を事業者に勧告する
  5. 結果の記録・保管:事業者は、医師から受けた結果報告を5年間保存しなければならない

①労働時間の算定

面接指導を実施するために、まずは1ヶ月の時間外・休日労働時間をそれぞれ正確に把握する必要があります。そのため、時間外・休日労働時間をそれぞれ算定します。この労働時間の算定は、毎月1回以上、一定の期日を定めて行います。

具体的な計算方法としては、以下の式を用います。

「1ヶ月の時間外・休日労働時間数=1ヶ月の総労働時間数-(計算期間1ヶ月の総暦日数/7)×40」

なお、時間外労働や休日労働についての詳細は、下記のページをご覧ください。

時間外労働とは | 特殊な勤務形態における時間外労働

労働時間の把握について

労働者の労働時間の状況を把握する方法は、客観的な方法、又はその他適切な方法による必要があります。

平成31年4月1日の労働安全衛生法の改正により、高度プロフェッショナル制度が適用される労働者以外の労働者について、労働時間の把握が義務化されました。(もっとも、高度プロフェッショナル制度が適用される労働者については、使用者は、別途、健康管理時間を労働基準法規則に定める方法で把握する必要があります。)

事業者は、タイムカードの記録やパソコン等の使用時間の記録といった客観的な方法によって、労働者の労働時間の状況を把握しなければなりません。

加えて、これらの状況に関して作成した記録を3年間保存するために必要な措置を講じる義務も負います。

対象者への情報通知義務

事業者は、1ヶ月あたりの時間外・休日労働時間数が基準を超えたときには、その情報を速やかに当該労働者に伝えなければなりません。その時間数の基準は、80時間を超えることです。

そして、自主的な面接指導の申出を促すために、併せて面接指導の実施方法や時期等を案内することが、法改正により義務付けられています。

事業者には、毎月1回以上、一定の期日において、これらの労働時間数を算定する義務が課せられているので、対象者がいる場合、月に1度は書面や電子メール、給与明細への記載等によって、かかる情報を通知することになります。

②労働者からの申出

労働者から面接指導の申出があった場合は、遅滞なく実施しなければなりません。この面接指導は、当該労働者からの申出から、おおむね1ヶ月以内に実施します。なお、申出は、書面や電子メール等の記録に残る形で行われる必要があります。

また、産業医は労働者の健康診断の結果や労働時間等の情報によって、健康障害の発生リスクがあると判断した者に対して、面接指導の申出を勧奨することができます。それにより、労働者が面接指導を受け、健康確保へとつながるとされています。

ちなみに、産業医とは、労働者が健康で快適な作業環境において仕事ができるように、専門的な立場から指導・助言を行う医師です。

確実に労働者が面接指導を受けるために、労働者が申出をしやすい環境を整えるのも大切です。例えば、簡単な手続きで申し込め、周囲の労働者に知られずにできたりする等の環境つくりをしましょう。

③医師による面接指導

実際に面接指導を行う医師としては、その事業場の専属である産業医や事業場で産業保健活動に従事している医師が推奨されています。

また、使用者が指定する医師での面接指導を労働者が希望しない場合は、外部での実施になります。外部の医師に委託する場合においても、産業医の資格を持つ医師が望ましいです。労働者が外部で面接指導を受けた場合は、その結果等の事項を記載した書面を提出してもらう必要があるため(労安衛法66条の8第2項)、労働者にその旨を伝えなければなりません。

産業医についての詳細は、下記のページをご覧ください。

企業における産業医の選任義務

④医師からの意見聴取

使用者は、面接指導を行った医師から、労働者の健康確保のための措置について意見を聴く必要があります(労安衛法66条の10の5項)。また、意見を聴く時期としては、面接指導実施後、遅滞なく聴かなければなりません(労安衛則52条の7)。意見内容としては、健康状態だけでなく職場環境や労働安全衛生管理体制の見直し等についての意見がある場合も考えられるため、使用者は慎重な対応が必要となります。

⑤結果の記録・保管

使用者は医師による面接指導の結果を記録し、5年間は保管をしなければなりません。
記録の内容としては、以下のものが挙げられます。

  • 実施年月日
  • 当該労働者の氏名
  • 労働者の疲労の蓄積状況や心身状況
  • 面接指導を行った医師の意見 等

面接指導実施後の措置について

使用者は面接指導の実施後、産業医等の意見を踏まえて適切な措置をとらなければなりません。
労働者がメンタルヘルス不調と判断された場合は、精神科医等と連携を図る対応が必要となるでしょう。

とるべき措置として、以下のようなものが挙げられます。

  • 勤務場所の変更
  • 作業内容の変更
  • 労働時間の短縮
  • 深夜労働の回数の削減
  • 休職

また、これらの措置をした後、労働者の改善がみられた場合は、面接指導を行った産業医等の意見を聴いたうえで、通常の業務に戻す等の措置をとる必要があります。

面接指導に関する就業規則の規定

就業規則においても、面接指導に関する手続き等を明確にするために、規程を設けることをお勧めします。

就業規則は、労働者に周知されている会社のルールであるため、労働者にとっても面接指導の申出がしやすくなります。

規程の内容としては、厚生労働省で定めるところの面接指導の対象となる長時間労働者に関するものや、面接指導の実施方法や申出の手続き、面接指導後の措置等、会社の実情に合わせて具体的に定めるとより安心でしょう。

面接指導にかかる費用負担と賃金

労働者に対する面接指導の実施は、労安衛法にて使用者が負担する義務として定められていることから、それらにかかる費用は使用者が負担すべきとされています。

また、面接指導を受けている時間も労働時間に算入されますから、面接指導はなるべく就業時間中に行うのが望ましいでしょう。そして、その時間の賃金は支払わなければなりません。

面接指導を行う際の注意点

会社が面接指導を実施するときに注意するべき点について、以下で解説します。

面接指導の実施者の守秘義務

面接指導を実施する産業医や看護師等、実施にかかわる従事者には、守秘義務が生じます。また、その結果記録等を保管している使用者も同様です。面接指導の結果記録等は、機微な個人情報が含まれることが多く、十分注意をしなければなりません。健康診断等に関する情報を漏洩してしまうと、労安衛法上で罰則が適用されます。さらに、守秘義務に違反すると、民事責任として慰謝料請求を受けるおそれもあるため、厳格な取扱いが必要です。

本人から情報開示請求を受けた場合

面接指導の結果を本人から情報開示請求を受けた場合、個人情報保護法28条により、基本的に使用者は開示しなければなりません。しかし、同法28条第2項に該当する場合は、全て又は一部を開示しないことができます。

例えば、面接指導の結果には、業務と関連する意見や、就業上必要と思われる措置の意見、職場環境の改善に関する意見等が含まれており、労働者や、医師、使用者との関係が悪化するおそれがある場合等が考えられます。そのため、面接指導の結果によって開示する内容を、個別の労働者に応じて判断しなければなりません。

面接指導に関する不利益取扱いの禁止

使用者が、労働者による面接指導の申出を理由に不利益な取扱いを行うことは、法律上禁止されています(労安衛法66条の10第3項)。労働者が面接指導を受けない等を理由とした不利益な取扱いや、面接指導の結果による解雇や雇止め、不当な動機による配置転換を行う等は禁止とされています。

不利益の取扱いについての詳細は、下記のページをご覧ください。

不当労働行為の不利益取扱について
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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