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運輸局による監査について|巡回指導との違いや内容など

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

「運輸局」による運送会社への「監査」は、いわゆるトラック協会による巡回指導とは異なり、基本的に事前通告なしで行われます。
また、「運輸局」による「監査」によって法律違反が発見されると、巡回指導とは異なり、車両停止等の行政処分を受ける恐れもあり、運送会社からすると、「監査」については非常に大きな関心が寄せられると思います。

この記事では、会社側の労働問題、労務管理、企業法務に精通した弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士が、「運輸局」による「監査」について、巡回指導との違い、監査の種類、監査を受けた後の流れについて、ご紹介いたします。

運輸局による運送会社への監査とは

「運輸局」による輸送会社に対する「監査」は、①自動車運送事業等監査規則と②自動車運送事業の監査方針について」という国土交通省の公示に基づいて行われます。

ここで、①自動車運送事業等監査規則の第2条で「監査」の目的について、「自動車運送に係る事故防止の徹底を期するとともに、運輸の適正を図ることを目的とする」と記載されています。

そのため、「監査」の目的は事故防止と運輸の適正化という2つの目的があることが分かります。

監査と巡回指導との違い

運送会社に対しては「監査」と巡回指導という2つの調査が入ることがあり、この2つの調査の違いは次のとおりです。

監査 巡回指導
調査機関 国土交通省の運輸局や運輸支局が行う。 トラック協会 (適正化事業実施機関) が行う
きっかけ 重大事故や法令違反の通報、巡回指導時に悪質とみなされる法令違反が見つかった場合等に行われる。 運送業を開始して1か月から6か月の間に行われることが多く、このときにA判定となれば2,3年に一度のペースで実施される。
事前通知 監査に関する事前通知がされることもあるが、基本的に突然調査官が現れて、監査が行われる。 巡回指導に関する事前通知は2、3週間前に郵便で届き、突然巡回指導が行われることはない。
調査時間 監査の際に違反項目があれば、数日かけて監査を行うこともある。 巡回指導は大体3時間程度で終了することが多い。
調査結果 違反が発覚した場合は行政処分が下される。 巡回指導の際に違反項目があれば、指導が入り、業務改善が求められる(行政処分はない)。しかし、評価がA~Eの5段階で行われ、DまたはEの評価となれば、運輸支局に通報され、監査の対象となる可能性がある。

運輸局による監査の原因(端緒)

「運輸局」による「監査」が入るきっかけ、原因となる事情等を具体的に紹介いたします。

  • ①法令違反の疑いがある場合
    ⇒適正化事業実施機関による巡回指導や利用者からや内部からの通報等がきっかけ
  • ②死亡事故を起こした場合
  • ③ドライバーによる悪質な違反が判明・疑われる場合
    具体例:酒酔い運転、酒気帯び運転、無免許運転、無車検運行及び救護義務違反(ひき逃げ)
  • ④事業改善報告等を拒否したや改善が認められない場合
  • ⑤福利厚生が整備されていない場合
    具体例:雇用保険、健康保険又は厚生年金保険に加入していない旨の通報があった場合や最低賃金に違反している場合
    ⇒労働基準監督機関と地方運輸機関の相互通報制度があり、互いの機関が互いに把握した法令違反等を通報し合うというもの。
  • ⑥3年間で3回以上同じような事故を起こした場合
  • ⑦安全への管理体制が整っていない場合
  • ⑧巡回指導を拒否した場合

運輸局による監査の種類

「監査」の種類には、以下で説明するように、3つの種類があります。
そこで、以下では、その3つである、特別監査、一般監査、街頭監査について、説明していきます。

ただ、監査を受ける場所は事業者の営業所その他の事業場又は事業用自動車の所在する場所に立ち入って実施するもの(臨店による監査)や事業者の代表等を運輸局に呼び出して実施する呼出しによる監査というものもあります。

この呼出しによる「監査」は、行政処分後の改善確認のための再監査の場合や確認する事項が限定的であり、臨店による監査による必要性がないと判断される場合に実施されます。

特別監査

1つ目の特別監査は、「トッカン」とも呼ばれており、引き起こした事故または疑いのある法令違反の重大性に鑑み、厳格な対応が必要と認められる事業者に対して行われる監査です。

一般監査のように、重点事項を定めて行われるものではなく、全般的な法令遵守状況を確認する監査です。
基本的には事前の通告なく突然行われるものですが、事前に通知されて行われる場合もあります。

一般監査

2つ目の一般監査は、特別監査に該当しないもので、重点事項を定めて法令遵守状況を確認する監査のことです。

この重点事項は、監査をするきっかけとなったものに応じて、重点事項が決まります。
そして、一般監査を実施した事業者において、全般的な法令順守状況を確認する必要があると認められた場合には、特別監査に切り替わることがあります。

基本的には事前の通告なく突然行われるものですが、事前に通知されて行われる場合もあります。

街頭監査

街頭監査とは、事業用自動車の運行状況や実態を確認するために、街頭で事業者を特定せずにおこなわれる監査のことです。
いわゆる抜き打ちチェックのような監査で、基本的には、発着場などでバス事業に向けて行われることが多いです。

運輸局による監査の内容

「監査」の流れとしては、帳票類や車両を点検し、従業員への質問等をして事情を聴取し、これらの結果を踏まえて、監査結果を事業主に伝えるというものです。

この点、「監査」で確認される重点項目は、国土交通省によって定められており、次の8つになります。ただし、街頭監査・呼出しによる監査を除きますので、注意してください。また、監査のきっかけとなった事情に応じて、①から⑧以外の事情も追加されます。

  1. 事業計画の遵守状況
  2. 運賃・料金の収受状況
  3. 損害賠償責任保険(共済)の加入状況
  4. 自家用自動車の利用、名義貸し行為の有無
  5. 賃金の支払い状況
  6. 運送引受書の作成・交付・保存状況
  7. 運行管理の実施状況
  8. 整備管理の実施状況

特に、④名義貸し行為、⑦運行管理の実施状況、⑧整備管理の実施状況で違反が見つかると重い処分が下る可能性があるため、十分注意してください。

監査実施後の流れ

「監査」の実施から終了までの流れは次のとおりです。

  1. ぬきうち監査の実施
  2. 自認書の作成
  3. 改善指示書が通知される。
  4. 弁明の機会付与(弁明書の提出)
  5. 輸送施設の使用停止及び附帯命令書
  6. ナンバーの返還(領置)又は営業停止
  7. 呼出監査及び改善報告書の提出

そして、これらについて、次で詳しく説明いたします。

自認書の内容確認

②自認書とは、監査が終わったら、事業者の代表者が違反事項について記載する書面です。
②自認書の内容としては、「~監査を受けたところ、下記の事実があったことに相違ありません。」という文章から始まり、違反事項を書かされ、署名押印をする必要があります。

そして、上記③改善指示書という書類は、この自認書に記載された事実を前提にしますので、違反がなかったとしても、自認書で違反があったと認めてしまうと、違反があったという扱いを受けるおそれがあります。

そのため、②自認書を書く際に、「違反していないのでは?」と思えば、必ず担当者に監査の場で確認するようにして、違反事項ではないものを違反事項だと認めないようにしましょう。

弁明書の提出

④弁明の機会に提出する弁明書について、会社側に提出する義務はありません。
あくまで、違反事項に対する弁明の機会があるというだけなので、反論をする必要がなければ、弁明書の提出は必要ありません。

この点、③弁明書の提出期間は2週間とされており、弁明書を作成等するための期間としては短いように思えます。そのため、弁明書を提出する際には、監査で指摘された点からある程度の反論の方針を検討しておく必要があるといえるでしょう。

なお、弁明書を提出すると、その弁明書にしたがって再調査が行われるため、その分だけ行政処分は先送りとなり、処分を受けるタイミングが後ろにずれることになります。

監査による行政処分の種類

「監査」後に行政処分等が行われることがありますが、行政処分等に至らないものとして軽い順に①及び②で並べ、行政処分を軽い順に③から⑤に並べました。

  1. 勧告(勧告書の交付のみで、トラックの運転は可能)
  2. 警告(警告書の交付のみで、トラックの運転は可能)
  3. 自動車その他の輸送施設の停止(トラックを動かすことの禁止)
  4. 事業の停止処分(営業停止)
  5. 許可の取り消し処分

これらの処分をする上で、どういった場合にはどういった処分をどの程度下すかという点は事前に明らかにされています。
例えば、③に関する行政処分の例をいくつか紹介いたします。

違反内容 初違反 再違反
運転記録の改ざん・不実記載 60日車 120日車
酒酔い・酒気帯び運行の業務 100日車 200日車
休憩・睡眠施設の管理、保守違反 警告 10日車
整備管理者に対する権限付与義務違反 10日車 20日車
疾病・疲労等運行の業務 80日車 160日車

この他、許可の名義貸しが明らかになれば、一発で30日間の④事業停止が行われます。

監査への対策

これまで説明してきたとおり、「監査」は法律を遵守しているかどうかを徹底的に確認するため、「監査」を受けること自体、運送会社としては非常に大きな負担となります。そのため、監査の対策としては、巡回指導をしっかり受けたり、重大な事故を起こさないように努力することが重要です。
そして、何よりも法令順守を徹底することが最も肝要なポイントでもあります。

この点、従業員の労務に関する違反についても「監査」が入るきっかけとなることは既に説明したとおりです。
法令順守できているかはもちろん、従業員の労務問題から「監査」が実施されないよう、会社側の労働問題、労務管理、企業法務に詳しい弁護士法人ALGの神戸法律事務所の弁護士に一度ご相談ください。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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